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僕も主役になりたかった…… 

2026/6/12

『風前の灯火なんて言わせない! 着物の逆襲』を書いていたら、1980年のサントリーREDのCMを思い出した。   和服姿の大原麗子が、「すこし愛して、なが〜く愛して」と甘えるように語る。 勝気なのに、どこか放っておけない。 男たちは、まんまと心をつかまれた。 しかも相手役の男性は、最後まで姿を見せない。 だから視聴者は、「もしかして俺?」と勝手に主役になる。 僕も、強くて、稼げる男になりたい――。 着物の色気と“余白”を見事に使い切ったCMだった。   その年の9月、29歳の僕は会社に ...

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バイオリンは、うまくならなくていい!

2026/6/8

バイオリンを始めて15年になる。 胸を張れるのは年数くらいだ。最初の2年は教室に通ったが、肩を痛めて3年間休業。その後は独学。最近は「毎日10分」がやっとである。 だから当然、うまくならない。 でも最近は思う。別に、それでいいじゃないか、と。   理由は三つある。 一つ目は、1980年のスイスで教わったことだ。 クリスマス前、バーゼル近郊の音楽学校教師でリュート奏者の大島秀文さんの家に泊めてもらった。 夕方になると、長靴姿の教え子がやって来る。爪には畑の土が残っている。 彼は静かにピアノへ向かい ...

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怒りの時代の「品質検査」 

2026/6/5

最近、テレビやSNSを眺めていると、批判そのものがひとつの娯楽になったような気がする。   誰かを叩く。 みんなで叩く。 そして、もっと叩ける材料を探す。 まるで町内の井戸端会議に拡声器と高速通信を付けたようなものだ。 もちろん、批判そのものは悪くない。 社会を良くするためには必要だ。   ただ、気になるのは「批判の質」である。   昔は批判の前に調査があった。 今は調査の前に投稿がある。 しかも、SNSは怒りと相性がいい。 冷静な分析より強い言葉のほうが広がりやすく、断定は ...

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大分市中心市街地の未来図 ― まず羅針盤を定めよう!

2026/6/2

大分市が公表した22街区・54街区の利活用アイデア募集には、12の提案が寄せられた。 どれも熱意にあふれ、街を良くしたいという思いが伝わってくる。 しかし、「一番良い案はどれか」と問われると、答えるのは難しい。 なぜか。 それは、「大分市中心市街地はどのような未来を目指すのか」という方向性について、 関係者の共通理解が求められるからだ。 提案書には「交流」「にぎわい」という便利な言葉が並ぶ。 だが、にぎわいとは何か。交流とは何か。写真映えする施設ができれば交流なのか。人が集まればにぎわいなのか。 この問い ...

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取り扱い注意? 和田誠『倫敦巴里』を送ります

2026/5/28

グラフィックデザイナーの娘へ。   『倫敦巴里』を手に入れた。本を開くと、和田誠さんが、「はい、ここ笑うところですよ」とウインクしてくる気がする。あの軽やかさには、あなたもきっとすぐ仲良くなれるだろう。似顔絵を描く人にとって、この本は小さな秘密の参考帳みたいなものだ。   ただね、ひとつだけ小声で伝えておく。和田さんの時代のユーモアには、今読むと「おっと、これは……」と少し肩をすくめたくなる“いじり”の感覚が、混ざっていることが多い。   もちろん悪気なんてまったくない。でも ...

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シンガポールではまった料理、バクテーがもうすぐ嫌いになる訳

2026/5/26

妻が作った、四度目のバクテー。 薬膳スープで、トロトロに煮込まれた豚リブ。味も食感も、僕がシンガポールで完全に虜になった料理だ。   94歳の義母も、この料理には目がない。 やわらかな肉をほぐし、最後はスープにご飯を入れて「おじや」にする。 「これが一番うまいねえ」と、実に幸せそうだ。   なにより不思議なのは、香辛料が大の苦手だった僕が、バクテーに夢中になっていることだ。 八角、ニンニク、ハッカ系の香り――以前なら、後ずさりしていた。 人間、いくつになっても変われる。 バクテーは、そ ...

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震度5強の夫、耐震訓練を始めました

2026/5/22

年を取ると、人はなぜキレやすくなるのか。 どうやら原因は“加齢”というより、体内のどこかにある謎のスイッチらしい。   ある日突然、テレビに向かって文句を言い始める。 しかも厄介なのは、地震と同じで予兆がないことだ。   「あ、来るな」と思った瞬間には、もう揺れている。 震源地は自分、震度5強。   もちろん、理性のプレートをずらしたのは自分自身だ。 あとから自己嫌悪の余震が、じわじわ長く続く。   そして最大の被災者は、たいてい妻である。 いきなり、家庭内災害に巻 ...

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淡竹採りの朝、私はイタリア人になった?

2026/5/21

早朝から淡竹採りで、しっかり汗をかいた。 帰宅して朝風呂へ直行。湯船の中で「これぞ大人の休日」と、ひとり悦に入っていたら、今度は自宅前で水道管の盛替え工事が始まった。   すると、元ゼネコン社員の血が騒ぐ。気がつけば、ワイン片手に現場見学である。   ショベルカーの動き、職人さんの段取り、土の掘り返し方まで気になる。たぶん顔つきは、野球少年が甲子園を見る時と同じだったと思う。   その様子を妻が写真に撮り、娘へ送信。 すると、「完全にイタリア人の“ウマレル”やん」と返信が来た ...

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風前の灯火なんて言わせない。着物の逆襲

2026/5/18

5月10日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、ふらりと「銀座もとじ」の暖簾をくぐった。 世界のトップが着物屋に現れるとは、着物の神さまも「そろそろ日本も本気出せや」と笑ったに違いない。   なにしろ純国産の着物は、いまや風前の灯火だ。このままでは、日本文化という宝石箱の底が、するりと抜けかねない。   そんな時に妙に沁みるのが、NHK時代劇『あきない世傳 金と銀3』。 売れない時代に、呉服屋の女将が知恵と工夫で商いを立て直す姿が、なんとも粋である。 劇中の「買うての幸い、売って ...

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嗅覚が消えた!人生の味が増えた—75歳が受け取った思いがけない贈り物

2026/5/11

「ジャスミンの花の匂いが感じられないのです!」 思いのほか大げさな訴えになった。だが、医師は落ち着いたものだ。「それは大変、診てみましょう」。診断は、慢性の鼻腔炎症による嗅覚障害。なるほど、世界は静かに“無臭化”していたわけである。   ここで、ふと三年前のベトナム旅行を思い出した。屋台の湯気、香草の山、魚醤の気配。あのとき私は、「ベトナム料理は体に合う。ひょっとすると自分のDNAは東南アジア系かもしれない」などと、いささか大胆な仮説を家族に披露した。 ところが返ってきたのは、冷静な一言だった。 ...

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