2026/6/2
大分市が公表した22街区・54街区の利活用アイデア募集には、12の提案が寄せられた。 どれも熱意にあふれ、街を良くしたいという思いが伝わってくる。 しかし、「一番良い案はどれか」と問われると、答えるのは難しい。 なぜか。 それは、「大分市中心市街地はどのような未来を目指すのか」という方向性について、 関係者の共通理解が求められるからだ。 提案書には「交流」「にぎわい」という便利な言葉が並ぶ。 だが、にぎわいとは何か。交流とは何か。写真映えする施設ができれば交流なのか。人が集まればにぎわいなのか。 この問い ...
2026/5/28
グラフィックデザイナーの娘へ。 『倫敦巴里』を手に入れた。本を開くと、和田誠さんが、「はい、ここ笑うところですよ」とウインクしてくる気がする。あの軽やかさには、あなたもきっとすぐ仲良くなれるだろう。似顔絵を描く人にとって、この本は小さな秘密の参考帳みたいなものだ。 ただね、ひとつだけ小声で伝えておく。和田さんの時代のユーモアには、今読むと「おっと、これは……」と少し肩をすくめたくなる“いじり”の感覚が、混ざっていることが多い。 もちろん悪気なんてまったくない。でも ...
2026/5/26
妻が作った、四度目のバクテー。 薬膳スープで、トロトロに煮込まれた豚リブ。味も食感も、僕がシンガポールで完全に虜になった料理だ。 94歳の義母も、この料理には目がない。 やわらかな肉をほぐし、最後はスープにご飯を入れて「おじや」にする。 「これが一番うまいねえ」と、実に幸せそうだ。 なにより不思議なのは、香辛料が大の苦手だった僕が、バクテーに夢中になっていることだ。 八角、ニンニク、ハッカ系の香り――以前なら、後ずさりしていた。 人間、いくつになっても変われる。 バクテーは、そ ...
2026/5/22
年を取ると、人はなぜキレやすくなるのか。 どうやら原因は“加齢”というより、体内のどこかにある謎のスイッチらしい。 ある日突然、テレビに向かって文句を言い始める。 しかも厄介なのは、地震と同じで予兆がないことだ。 「あ、来るな」と思った瞬間には、もう揺れている。 震源地は自分、震度5強。 もちろん、理性のプレートをずらしたのは自分自身だ。 あとから自己嫌悪の余震が、じわじわ長く続く。 そして最大の被災者は、たいてい妻である。 いきなり、家庭内災害に巻 ...
2026/5/21
早朝から淡竹採りで、しっかり汗をかいた。 帰宅して朝風呂へ直行。湯船の中で「これぞ大人の休日」と、ひとり悦に入っていたら、今度は自宅前で水道管の盛替え工事が始まった。 すると、元ゼネコン社員の血が騒ぐ。気がつけば、ワイン片手に現場見学である。 ショベルカーの動き、職人さんの段取り、土の掘り返し方まで気になる。たぶん顔つきは、野球少年が甲子園を見る時と同じだったと思う。 その様子を妻が写真に撮り、娘へ送信。 すると、「完全にイタリア人の“ウマレル”やん」と返信が来た ...
2026/5/18
5月10日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、ふらりと「銀座もとじ」の暖簾をくぐった。 世界のトップが着物屋に現れるとは、着物の神さまも「そろそろ日本も本気出せや」と笑ったに違いない。 なにしろ純国産の着物は、いまや風前の灯火だ。このままでは、日本文化という宝石箱の底が、するりと抜けかねない。 そんな時に妙に沁みるのが、NHK時代劇『あきない世傳 金と銀3』。 売れない時代に、呉服屋の女将が知恵と工夫で商いを立て直す姿が、なんとも粋である。 劇中の「買うての幸い、売って ...
嗅覚が消えた!人生の味が増えた—75歳が受け取った思いがけない贈り物
2026/5/11
「ジャスミンの花の匂いが感じられないのです!」 思いのほか大げさな訴えになった。だが、医師は落ち着いたものだ。「それは大変、診てみましょう」。診断は、慢性の鼻腔炎症による嗅覚障害。なるほど、世界は静かに“無臭化”していたわけである。 ここで、ふと三年前のベトナム旅行を思い出した。屋台の湯気、香草の山、魚醤の気配。あのとき私は、「ベトナム料理は体に合う。ひょっとすると自分のDNAは東南アジア系かもしれない」などと、いささか大胆な仮説を家族に披露した。 ところが返ってきたのは、冷静な一言だった。 ...
なぜ人はシンガポールを離れられないのか?三世代が証明する“恋しい街”の正体
2026/5/10
「日本に帰りたくないんですよね」。 シンガポールに暮らす人から、この言葉を聞くのは一度や二度ではない。 湿度の高さに閉口しながらも、彼らはなぜかこの小さな島を離れたがらない。 不思議に思っていた私だが、ある日ふと気づいた。 1936~1940年に暮らした大叔父一家も、2025年から住んでいる息子一家も、同じようにシンガポールを「恋しいわが街」と呼んでいるのだ。 時代も背景も違うのに、どうして同じ感覚が受け継がれていくのだろう。 その理由のひとつは、この国に流れる“心地よい距離感”にある。 多 ...
2026/5/4
週末や連休の福岡では、もはや「遊びに行く場所を探す」こと自体に苦労する。海も川も公園も、人であふれる。ようやくたどり着いた釣り場も、竿を出す隙間すらない。時間をかけても、魚は釣れず、疲れだけが残る。大都市では、レクリエーションそのものが贅沢品になりつつある。 そんな中、息子一家は片道2時間半をかけて大分の実家に帰ってくる。しかも最低3泊。そこまでしてでも帰る理由は、はっきりしている。別府の温泉・城島の遊園地・大分港の釣り・番匠川の川遊び。田ノ浦ビーチ・登山、さらにはアフリカンサファリまで—— ...
旅先でがっかりしない方法!期待と現実のズレを楽しみに変えるコツ
2026/5/1
旅先で、お目当ての場所が見つからない。 ようやくたどり着いても、現実は期待ときれいにすれ違う。 そんなとき機嫌を損ねると、旅はたちまち色あせる。 風景のせいではない。先にくたびれるのは、たいてい自分の見方のほうだ。 忘れがたい一件がある。 今年の三月、亡き大叔母が新婚時代を過ごした元英国領、シンガポール・ミッドルロード218、カークテラスを訪ねたときのことだ。 九十年も経てば、面影など残っているはずがない。 それでも彼女が「いちばん輝いていた場所」と語ったその地点に、一度は立ってみたかった。 ...
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