
現在、クール&シンプルモダンの住宅は、業界のベーシックトレンドです。しかし、自分にどれだけの効果や利益をもたらすかという使用価値の観点から見ると、長期間住み続けるには深刻な問題点があるのです。今回は、クール&シンプルモダンの住宅の落とし穴と回避方法について説明します。最後まで読んでいただければ、このトレンド住宅が自分や家族に合うかどうかを判断する方法がわかるでしょう。
目次
クール&シンプルモダンのトレンド住宅
クール&シンプルモダンな住宅とは、無駄を省いたスタイリッシュで現代的なデザインです。この住宅の特徴は、直線的なライン、吹き抜け、白基調、ガラスや金属などの無機質的な素材を使い、シンプルで洗練された印象を持つ家です。
このようなスタイルは、家事の効率化や整理整頓を重視し生活の質を向上させたい人々。さらに、都市部でのコンパクトな住宅や、限られたスペースを有効活用したい人々に適しています。
60年以上も続くトレンド住宅になった理由
このトレンドは1960年頃、スカンジナビアのインテリアスとして紹介され、今日まで約60年間続いています。顧客にとってクール&シンプルモダンの住宅には、機能性と美しさを兼ね備えていること、コストを抑えられること、飽きないこと、流行や時代に左右されないこと、他のスタイルと組み合わせやすいことなどのメリットがあります。

一般的にトレンドは、市場の需要を形成し、消費者の関心を引き、売上と利益を増やすために業界が仕掛けます。クール&シンプルモダンな住宅が業界の売上や利幅を上げる主な理由は以下の通りです。
○機能とスタイル重視のデザインは時代を超えて愛され続けるため、安定した需要の実現
○複雑な構造や装飾が不要なために、建設のコスト効率が高く、高利益の実現
○省エネ設計によって維持費が低く抑えられ、高い建設価格でも販売可能
○洗練されたイメージで住宅メーカーのブランド価値を高め、高利益の実現
長期化するトレンド住宅への疑問
業界が一つのトレンドに長期間集中すると、さまざまな問題が生じます。クール&シンプルモダンのトレンド住宅について、以下の疑問が浮かんできます。
○この住宅情報は、不動産の資産価値だけに偏っていないか?
○顧客と業界の利害は、一致しているのか?
○立地を選ばない、画一的な標準プラン、シンプルモダンの街並みに魅力はあるか?
○この住宅に住むことで、生活がより良く、より幸せに、より満ちたものになるのか?
○このトレンドに違和感をもつ人は、どんな住宅を選べば良いのか?
クール&シンプルモダンのトレンド住宅の落とし穴
前述の疑問の回答として、トレンド住宅の5つの落とし穴について説明します。それは①顧客の利益が守られない、②家を建てる目的を実現できない、③親の性格に合わないと情緒不安定になる、④子供のアイデンが育たない、⑤資産価値としてのリスクです。

落とし穴1.顧客の利益が守られない
家づくりは一生に一度の大きな決断であり、素人だけで判断するのは難しいものです。そのため、多くの人が専門家の意見を求めますが、これがトレンド住宅を流行らせる要因にもなっています。
その結果、クール&シンプルモダンスタイル以外の情報が非常に少なくなっています。このような状況では、顧客は自分らしさではなく、変身願望によってトレンド住宅を選んでしまいます。言い換えると、顧客は住宅の適否判断を業者に任せてしまい、自分の利益を守る権利を失ってしまいます。
対策のポイントは、住宅建物に関することではなく、生活者としての判断基準を持つことです。具体的には、最も大切にしたい生活場面を目標ビジョンとして持つことです。
落とし穴2.家を建てる目的を実現できない
住宅の本質的な役割は、自分と家族の生活をより良く、より幸せで、より満ち足りたものにすることです。「家族の団らん」「安らぎ」「家族の絆」を実現することが、家を建てる目的なのです。しかしながら、この目的を達成するための理論や設計方法、実績例に関する情報は見つけにくいのが現状です。

上の図は、マズローの欲求5段階説に基づく人間の欲求の階層を示しています。この理論から、住宅の必須条件として、次の3つの要素が浮かび上がります。まず「Ⅰ:生理的欲求」と「Ⅱ:安全欲求」を満たす資産価値(不動産の所有価値)、そして「Ⅲ:愛と所属欲求」を満たす生活支援価値(使用価値)です。
現在、経済の低迷や女性の社会進出の影響で共働き夫婦が増加し、家族団らんの時間が減少しています。これに伴い、子育てをはじめとする家族機能の衰えが顕著になってきました。さらに、親子間や夫婦間の暴力や暴言、過干渉、不登校といった問題、また嫁姑問題、兄弟姉妹問題、きょうだい児問題など、そして離婚問題など、家族内のあらゆる問題が社会問題化しています。にもかかわらず、住宅業界も顧客も、住まい改善によって「愛と所属欲求」を実現できるという理解が不足しており、そのチカラを十分に活用できていません。

住宅の設計や改良が、家族の幸福と絆を深める大きな要因となることを認識し、それを証明する理論や具体的な方法、実例を提供することが求められています。この認識を深め、実践することで、住宅は単なる生活空間以上の価値を持つことができるのです。
落とし穴3.違和感がある住まいは人を情緒不安定にする
クール&シンプルモダンのトレンド住宅が合わない人が大勢います。この人たちがこのトレンド住宅に住むと、どのような問題が発生するのでしょうか?

自分のアイデンティティや性格に合わない住宅環境に住むと、人は情緒不安定になります。私たちの行動や感情は、アイデンティティと住環境の相互作用によって強い影響を受けます。アイデンティティに合わない住環境では、行動や感情がその時々の気分によって変わりやすくなります。その結果、行動や感情、思考に一貫性がなくなり、情緒が不安定になってしまうのです。(次項のNLL理論図を参照)
多くの人は行動を変えられない原因を意識の問題だと考え、人に原因を求めるため、夫婦喧嘩に発展するのです。そのうえ、意識を変えるのは難しく、行動を変える前に挫折してしまいます。実際には、間取りや雰囲気が期待の行動を阻害しているのです。例えば、片づけられないのはモチベーションの問題ではなく、片付けに手間がかかり過ぎるからです。移動や探す手間をかけない、片づけやすい環境に改善すれば、不満は確実に減ります。
対策のポイントは、自分や家族にとってトレンド住宅が適しているか、相性を判断する方法を身につけることです。
落とし穴4.子供のアイデンティティが育ちにくい

アイデンティティとは個人が自己を認識し、他者との関係性や環境との調和を図るために持つ一貫性のある自己像や特徴のことです。子供が自分自身を理解し、自信をもって成長できないと、人間関係でトラブルを起こしやすい、進路や仕事を選ぶ根拠を持てないなどの大人になります。
子供のアイデンティティは、親子関係や友人関係を通じて形成されます。しかし、情緒的に不安定な両親の元で育った場合、アイデンティティを確立することが難しくなることがあります。
対策のポイントは夫婦の情緒安定を促し、相互扶助の機会づくり、子供安全基地づくりなど、住まい改善をすることです。
落とし穴5.資産価値リスク
クール&シンプルモダン住宅には、不動産リスクがあります。具体的には、個性の喪失、高級化による負担増、長期的な満足度の低下、再販価格の不確実性などです。しかし、これらの影響は小さいと考えます。なぜなら、このトレンドは今後も続くと予想されるからです。一方で、生活問題は家族構成や年齢に応じて変化します。そうした変化を乗り越えて、家族を維持したいという欲求、つまり「愛と所属の欲求」は、今後ますます高まるでしょう。
クール&シンプルモダン住宅との相性・簡易チェック術
下図を参考にして、2つの質問に答えるだけで、このトレンド住宅とあなたの相性がわかります。
第1問は「普段の片付け状況はどれですか?」、第2問は「あなたの性格はどれですか?」。A、Bチェックに該当する数字を選んで、合計してください。

相性判定は「2~4点で相性は真逆で悪い」、「6~8点で相性は良くない」、「10~12点で相性がいい」となります。
まとめ
今回の記事のまとめは以下の通りです。
○クール&シンプルモダンな住宅の特徴
・無駄を省いたスタイリッシュで現代的なデザイン
・直線的なライン、吹き抜け、白基調、ガラスや金属などの素材を使用
・整理整頓と効率性の重視、都市部のコンパクトな住宅向き
○1960年以降、長期トレンドの理由と疑問
・機能性、美しさ、コスト効率の高さ、飽きないデザインなどが
・業界にとっても、安定需要と高利益を生み出す商品
・不動産の資産価値に偏り過ぎていないか?
・顧客と業界の利害が一致しているか?
・画一的な街並みが立地に適しているか?

○クール&シンプルモダンのトレンド住宅の落とし穴
① 顧客の利益が守られない:専門家に依存し、自分のライフスタイルに合わない住宅を選んでしまうことが多い。自分の生活目標を持つことが重要。
② 家を建てる目的を実現できない:家族の団らんや安らぎを実現するための情報が不足しており、住宅が家族の幸福に寄与しないことがある。家族の絆を深める設計や理論の提供が求められる。
③ 違和感がある住まいは人を情緒不安定にする:住環境がアイデンティティに合わないと、情緒不安定になる。トレンド住宅が自分や家族に適しているかを判断する方法を学ぶことが必要。
④ 子供のアイデンティティが育ちにくい:情緒不安定な環境では子供のアイデンティティが育ちにくい。夫婦の情緒安定や子供の安全基地づくりが対策となる。
⑤ 資産価値リスク:個性の喪失や高級化による負担増、再販価格の不確実性があるが、トレンドが続くため影響は小さい。生活問題は家族構成や年齢に応じて変化し、「愛と所属の欲求」は高まる。
○クール&シンプルモダン住宅との相性判定の簡易チェック方法
※なお、具体的な家づくの手法についてはイエケンブログの予定記事をご覧ください。
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